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番外編:ご隠居丹羽のビザール・ベース

 

今回からは、私、ご隠居丹羽が今までご紹介してきた普通のベース(?)とはちょっと違った形式、形状を持ったベースのコレクションをご紹介していこうと思います。

 

グレコ GB-8!?
グレコ GB-8!?

Greco GB-8!?

 

 さてさて、私のビザールベースコレクション、皆さんお楽しみいただけているでしょうか?

 今回はひとまず最終回と言う事で、真打ち中の真打ち?グレコ社製8弦ベースに登場いただきましょう。

 皆さん、最近、多くのベーシストが多弦ベースを使用しているのを良く見かけるようになったことに気がついていませんか?5弦ベースはもうほとんど当たり前(TOKIOの山口氏など)、6弦ベース(DREAMS COME TRUEの中村氏など)まで登場いたしました。そういう意味での多弦ベースはここ数年、ほんとうに一般的になってきました。5弦ベースは普通の4弦ベースにもう1本ローB弦(下側、5番弦として、B、E、A、D、G)を足したものが一般的ですね。6弦ベースは、そのベースにハイC弦(上側、1番弦として、B、E、A、D、G、C)を足したものが一般的です。

 これらのベースは特にジャズなどのようにE♭とかB♭などを多様する(管楽器の元音による)音楽に最適であること、また最近の楽曲のコードが複雑化してきてベースもそれに対応するよう音幅を広げる意味で多弦化が一般的になって来ました。つい最近、スティングレィベースで有名なアーニーボール社からミュージックマン・シルエットベースという普通のギター弦の構成(E、A、D、G、B、E)で全部の弦が1オクターブ低いチューニングというベースというか、ギターの出来損ない(バリトンギター?)というような製品も販売されています。これは以前からギタリストたちの間でギターでベースのような低音域を弾きたいという要求から生まれたものだそうで、もうギターとベースの境界線までよくわからなくなってきた製品と言えます。さわったことがないのでよくわかりませんが、すごく興味がありますね。弦はギター弦ではテンションが低すぎると思いますので、専用の弦が用意されているのでしょう。

 今回ご紹介する8弦ベースはこれらの考え方とは全く異なり、キワモノ的な音を追求した中で生まれた一品?です。8弦の構成は、普通の4弦ベースの各弦に複弦として2オクターブ高い音(普通のギターの音域)のでるギター用の弦を並行して足したものです。写真を見ていただくとお分かりのなるかと思いますが、要するに単純に4弦ベースにもう4本弦を足したものが8弦ベースということです。日本ではカシオペアの超絶スラッパー、ナルチョ・鳴瀬氏が8弦と10弦のベース(5弦ベース+複弦)をメインで使用しています。しかも指弾きで・・・これらのベースのテンションは指弾きではものすごく大変なはずなんですが、鳴瀬氏のすごさがわかります。世の中には変わった人もいて、アメリカのチープ・トリックというバンドのベーシスト、トム・ピーターセン氏は12弦ベース!を使用しています。この人の楽器の弦の構成は・・・不明です!?一度、YouTube などで検索して聞いてみて下さい。

 おっと脱線してしまいました。今回ご紹介する僕の8弦ベース、今ではIbanez(イバニーズ、アイバニーズ?)として有名なグレコ社が1980年代に製作した超レアもの?ベースです。当時、ほんの少しの限られたビザールギターメーカーだけが製造していましたが、まさかグレコ社までこんなベースを製造するとは夢にも思いませんでした。この楽器、吉祥寺の何とか楽器(店名は失念、今はもうない)に飾ってあったのを偶然みつけ、その場で購入した一品です。実は8弦ベース、その歴史は結構古く、1960年代に前出のビザールベースメーカー、ハグストローム社がすでに製造販売していたそうです。ビートルズの使用で有名なリッケンバッカー社も同時期に同様のモデルをリリースしていたとのこと。うちのマエストロ若松が大好きなイギリスのプログレバンド、イエスのベーシスト(実は僕も大ファンです)であるクリス・スクワィアー氏も愛用していたそうです。とにかく、その音は特徴的と言うよりは変わった音?としか表現できません。皆さんの中で、和楽器である大正琴って聞いたことがある方はいらっしゃいますか?実はこの楽器の音に元音がそっくりなんです。最初に弾いた時にはそれに気がついて一人で爆笑してしまいました。もっと違う音を期待していたのでほんとうに驚きました。

 僕が購入したこの楽器、型番は確か GB-8 だった?ような?はっきり覚えていません。ネットで検索してもこの形の物はみつかりませんでした。購入したのは1985年位だったかと思いますが、驚いたことに、この時代にアクティブタイプ(ボディの中にアンプとバッテリー内蔵)として販売されていました。ご覧の通り、2マイク、2ボリューム、1トーン、1 イコライザーの構成、ロングスケールで24フレット、重量は・・・10番街の殺人的な重さです。チューニングペグが8個あるのがお分かりになると思いますが、弦の交換とチューニングがそりゃあもう大変で・・・弦も複弦の細い方は普通のギター弦では長さが足りないので特殊な専用弦が法外な値段で売られています!ヘフナーの専用弦と同じですね。ほんとうに頭にきます!?ベンチャーズとの接点は・・・もちろん、全く、全然ありません!ですからビザールベースなんです!!

 ということで、今回でひとまず僕のビザールベースコレクションのご紹介を最終回とさせていただきます。ご清読?ありがとうございました。皆さんも色々な種類のベースに手を出してたくさん痛い目?に合ってみて下さい。音楽の世界がもっともっと広がって楽しくなること請け合いです!?

 

スタインバーガー XP2
スタインバーガー XP2

Steinberger XP2

 

 さてさてお待たせいたしました。変態・変形ベースの真打ちといえば、そうです、あのヘッドレスベースのパイオニアSteinberger(スタインバーガー)社製ベースの登場です。今回はそのモデルのうち、僕がコレクション?している二機種をご紹介してみたいと思います。このスタインバーガー社、ネッド・スタインバーガーという人がアメリカで1980年に創設、L2ベースというモデルを発売した時、その素材がオールグラファイト製(ネック、ボディ全て)で特別な弦(両側にボールエンドが付いた物)を使用するというのが一番の売り物だったのですが、あまりにも発売時の値段が高すぎて(日本円で当時100万円近かった!)当時日本に輸入されたのは10本程度だったそうです。その後1985年にその廉価版ということで、今回ご紹介するネックのみオールグラファイト製でボディは木製というXP、MX、MQシリーズというベースが発売されました。僕が所有している2台のうちの1台目は1985年代に発売され、なぜかその形からイカベース?などというありがたくない名称で呼ばれたスタインバーガーXP2です。個人的にはロケットみたいでかっこいいと思うのですが・・・?

 小型のボディーにロングスケール24フレットのオールグラファイト製ネック。初期型はEMG社製パッシブピックアップを装備、2ボリューム、1トーンというオーソドックスなレイアウト。その形状から軽くて演奏し易いのではと思われがちなのですがこれがとんでもない間違い。オールグラファィト製のネックは死ぬほど重く、全重量の約2/3がネックという始末。また最大の欠点としてトラスロッドが技術的に装備できなかった為にネックが反った時(素材のグラファィトは絶対に反らないという触れ込みでしたが、実際にはしっかり順ゾリします)の調整は不能。おまけに24フレットもあるので身体が小さく、腕の短い僕には1フレットに指を届かせるには死ぬほど腕を伸ばさなければなりません。またボディが相対的に軽すぎるので、スラッピング(チョッパー)をやろうとするとボディが揺れてしまって演奏性は最悪。

 唯一の長所は音の反応が驚くほど早いということ。ちょっと判りにくいかと思いますが、オールグラファィトの指板上の弦をはじくとすぐさまピックアップに伝達される、タイムラグを感じさせない音の伝わりの良さがあります。これは演奏してみないと判らない微妙な感覚なのですが、一時期はこの素性に惚れ込んで、1990年代の中期頃まではファッション性も含め、特にユーロ系のミュージシャンたちがこぞって愛用していました。

 余談ですが、英国にも Status Graphite(ステータスグラファイト)社という、同様にオールグラファイト製のベースのみを製造、販売している会社があります。Level42(レベルフォーティートゥー)という英国ポップバンドのマーク・キングという超絶早引きスラッピングベーシストが愛用しているので有名なメーカーです。しかしどういう訳か1990年中期以後はこの形のモデル、急激に人気が落ち、表舞台から姿を消してしまいました。現在では特殊なバンド、前出のレベル42など、限られたジャンルの限られたプレーヤーたちだけに使用されているようです。確かに最近、その姿を見る事はほとんどなくなりました。演奏性も悪いし、元音にクセがありすぎる(好き嫌いがはっきり別れる音質)のも問題だったかもしれません。そのせいかXPシリーズの後に発売されたMX、MQシリーズにはトーンが細かく調整できるEMG社製アクティブタイプピックアップ(ボディ内にアンプと電池内蔵)が搭載されました。

 

スタインバーガー MX2
スタインバーガー MX2

Steinberger MX2  

 

 MX2ではXPシリーズの短所だった重量配分を解消する為、ボディを大きくしてネックとのバランスを取っています。ところがそれが災いしてしまい、せっかくシンプルにまとめようとしたオリジナルの設計思想に相反して、その重量はヘビー級になってしまいました。

  それでも弦を真っすぐに置いてそのまま片側から真っすぐテンションをかけてチューニングするシステム(特許のトランスレムシステム)のおかげでチューニングの精度は一般的なベースの比ではなく、大変正確で確実、高い安定性を誇っています。同社は現在でもこの革新的な技術を駆使してヘッドレスのウッドベースやLシリーズの廉価復刻版(シナプスシリーズ、池部楽器で購入できます)などを販売し続けています。値段は相当安くなりました。これはネックの指板部分のみにグラファイトを使用、後は全て木製にしたことにより達成されたとのこと。

 ところで肝心なオリジナルモデルの中古について、現存している演奏可能レベルな個体自体が少なく、中古市場で高値で取引されているようですが、調整の効かないネックがネック?となって状態の良い個体はなかなかみつからないようです。僕は怖いもの見たさ?で上記の二台を15~20年くらい前にXP2は国内の中古楽器屋さんで、MX2は海外の中古楽器屋さんからネットで購入しましたが、両方ともネックはそれなりにしっかり?順ゾリしています!演奏性の悪さからなかなか弾く機会もないのに、なぜか未だに手放せないでいる不思議なベースたちです。

 このベースたちもベンチャーズとは・・・全く接点がありませんね!?それでは今回はこのあたりで、第四弾をお楽しみに!!

Gibson Explorer
Gibson Explorer

ギブソン・エクスプローラー '85

 

 さて今回は第二弾、変態・変形ベースをご紹介したいと思います。

 知る人ぞ知る、1980年代に海外の有名ロック・プレーヤーたちが好んで使用していたベースです。その名はExplorer(エクスプローラー)、探検家とでも訳すのでしょうか、とにかくぶっ飛んだ形をしています。

 このベース(というかモデル)、The Who(ザ・フー)という英国の超有名バンドのベーシストだったジョン・エントウィッスル(残念ながら2002年に他界、僕は大ファンでした)氏が好んで使用していた楽器で、一度は皆さんも彼の演奏を耳にしているのではないかと思います。ロック・オペラの “  トミー ” と聞いてピンとくる方は相当のオールド・ロックファンとお見受けします。最近ではテレビシリーズの「CSI:科学捜査斑」のメインテーマになっている “ Who are you? ” という曲で彼のオリジナリティにあふれた演奏を聞く事ができます。

 僕の所有しているのはGibson社製1985年オリジナルモデルで、20年くらい前に三鷹にある三鷹楽器(現在は廃業)にて中古で購入しました。とにかく形と色に惚れ込んで購入しましたが、弾いてみると意外なことにこの形状が身体にぴったりフィットして、へたな形のベースより安定して演奏できるのです。このモデル、どういう風の吹き回しか今年になってギブソン社が復刻版を出しました。また別のメーカーでもライセンス生産ということで、アイバニーズ、エピフォン、アレンビックなど、それこそ色々なメーカーから多彩な改造版が販売されています。

 オリジナル仕様はパッシブ、ロングスケール、21フレット、2ボリューム、1トーンと一般的ですが、アンプにつなぐとエクスプローラー専用ピック・アップからそれこそロック色満点の図太い音が出てきます。勿論、トーンの調整で甘い音も出ますが、やはりこのベースはでっかいアンプでピック弾き、ゴリゴリの爆音というのがぴったりなオールド・ロック用の楽器だと思います。ベンチャーズサウンドとは・・・全く縁がないですね!?購入した時点でボディの状態は最悪、打痕、塗装のはがれ、ワレなど、相当ひどい状態でした。それでも一目惚れで衝動買いしてしまった、僕が所有している唯一のギブソン社製のベースです。(ちなみに一緒に写り込んでいるアシスタントガール?は愛猫のすーちゃんです。)

 今まで45年以上の演奏経験で、100本くらいの色々なメーカーと種類のベースを使用してきた中でも最も気に入っている変形ベースの1台です。

ハグストローム BII
ハグストローム BII
Hagstrom - BII(1966年製) 
      
第一回目として皆さんにご紹介するのは、シグマが主にコピー、演奏しているバンド、メルテイラー&ザ・ダイナミクスが 1973年の日本公演時に当時のベーシストが使用していたと言われるスウェーデンに本拠地のあるHagstrom(以下、ハグストローム)社製の BII(ビーツー)ベースギターです。このハグストローム社、元々輸入業から発足した老舗のアコーディオンメーカーだったそうで、1958年、エレクトリック・ギターの製造を開始したんだそうです。1983年にはギターの製造を中止したことで、一時はコレクターズ・アイテムにもなったようですが、何しろ作りがすごい!(色々な意味で?)後期の物は使ったことがないので知りませんが、僕が入手した1966年モデル(実はこれもダイナミックスの米岡さんからゆずっていただいた物)はそれはもう・・・何と言って良いのか、僕の持っているベースの中でも一番ビザーレ度の高いベースです。入手当時はまともに音がでなかったり、セッティングに問題があったりしたので、米岡さんの依頼で我がシグマの技術主任マサルくんの修理で何とか演奏できる状態になったという曰く付きの物です。よく見ないとわからないのですが、何とテールブリッジは木製(!)、オクターブ調整は基本的に不可能という代物。現在のベースでは考えられません。超軽量、ショートスケールで弦のテンションも低く、弾き易いということは言えますが僕にとってはちょっと低すぎるテンションなのでいつも演奏の時に注意しています。マイクの出力だけはビンテージ物らしく音色も太く、しっかりしていますが、とにかく僕自身、名前すら聞いた事がなかったベースで、ライブでは数回使用しただけです。今回の40周年記念録音にはもちろん(?)登場いたしません。ダイナミクスが使用していたということがなければきっと入手していなかったでしょう。もうそろそろ50年近くが経過している関係で瀕死の状態ですが、まあ、とりあえずドンズバベースということでコレクションだけでもしておこうと思う今日この頃です。